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コーヒーが人生の相棒となった日

人生のパートナー、ブラックコーヒー。

僕の人生を伝える上で欠かせない相棒であり、一日たりとも離さず毎日口にします。
先にお伝えすると、僕はずっとコーヒーが飲めませんでした。

今でこそ毎朝飲まないと一日が始まらないほど、人生に欠かせないパートナーですが、でもそうなったのは大人になってから。あの黒くて苦い大人の飲み物が、まったくダメだったんです。

どうしてコーヒーと生きていくことになったのか。今日はその始まりの話です。
少し長くなります。よかったら、温かいものでも飲みながら。

目次

飲まないのに、毎晩コーヒーを持ち帰っていた

コーヒーの原風景は、両親です。
毎朝、よくある普通のコーヒーメーカーで淹れていました。

コーヒーの香りをかぐと、朝のイメージが強いのは間違いなくこの印象です。でも自分で飲んだことは一度もなく、ココアやカフェオレも飲んだことはありませんでした。

転機は高校生。
マクドナルドでバイトを始めました。家から自転車で15分、歩くと45分くらい。冬は雪が積もるので、歩いて帰る日も多かった。そのお店は商業施設の中にあったので、21時で閉店。24時間営業じゃないので、残ったものは全部廃棄です。当時の店長が気を利かせて、クローズのメンバーにコーヒーを取っておいてくれました。

ありがたい。ありがたいんですが、ぼくはコーヒーが飲めない。
でも店長からのいただきものを断るなんて不義理はしたくない。

では、どうしたか?

寒い冬道にホッカイロ代わりで持って帰っていました。
暗い静かな田舎の帰り道。あのカップだけが温かい。飲まないけど、手は温まる。そういう使い方をしていました。

でも毎回捨てるのはもったいない。ある日ふと一口飲んでみることにしました。不思議と悪いことをしている気分。神社の境内に一歩入り、影に隠れて⋯完全にあやしい人ですよね(笑)

さっそく一口。 ⋯

「にがっ。」

ぜんぜん無理でした。なんだこれ。

次の日から、コーヒーの代わりにお湯をカップに入れて持ち帰るという、よくわからない謎習慣が始まります。
店長には、「いま、お湯にハマってるんで!」と意味わからない言い訳をしていました。

憧れのカフェ、ドトール

時は流れて、大学1年の秋。東京。

大学生の憧れバイトといえば、カフェ。最寄り駅のドトールで働き始めました。チェーン店かよ、とツッコミが入りそうですが、田舎者の僕からすれば、ドトールも立派な憧れのカフェだったんです。
(本当はキラキラしたカフェで働くのが怖かっただけ。)

最初は夕方から夜のシフトに入りました。
でもお金が足りなくて、朝も入らせてもらえることになりました。朝起きるのは得意だったので、そこは心配していませんでした。

もっと心配すべきは、別のところにありました⋯

早朝シフト初日、差し出された一杯

早朝シフト初日。その日は店長と2人。

朝5時に店に着いて、鍵を開ける。誰もいない、暗い店内。機械の電源を入れると、あちこちから、独特のもわんとした蒸気の匂いが立ち始めます。僕は仕込みと洗い物を任されました。

準備が一通り終わって、開店まであと10分。そのとき店長が、ぽんっとカップを差し出してきました。

「テイスティング」

「……」

眼の前に置かれた一杯のコーヒー。
お客様用はソーサーというお皿の上にカップが置かれます。ソーサー無しで置かれた商品のコーヒーを始めて見た気がします。

「実は、コーヒー、飲めないんですよね……」

「⋯え? じゃあなんで朝入ったの?」

なんでと言われても。そんなこと、聞かれてませんでしたし。店長がものすごく機嫌が悪い顔でこっちを見ているので、ぼくはすぐにこう言いました。

「いえ、飲めます。失礼しました」

そして一口だけ飲んで、残りはこっそり全部シンクに流しました。

業務を覚える前に、まさかこんな試練が待っていたとは。今の時代なら明らかなパワハラだったかもしれませんが。仕事をしたければ、コーヒーを飲めるようになるしかない。そういう状況でした。

大は小を兼ねる、という勘違い

でも僕、負けず嫌いなんです。そしてポジティブなんです。そんな若干18歳の僕は、とんだ奇行にはしります。コーヒーを飲めるための訓練が始まります。訓練というと大げさですが。

昔から言うじゃないですか。大は小を兼ねる、と。

当時の僕は、いちばん濃いコーヒーを攻略すれば、あとは全部いけるはずだと考えました。そしてエスプレッソという飲み物の存在を知ります。

人生初めてのスターバックス。渋谷の中心から少し離れた静かなスターバックス。ドキドキしながらカウンターでエスプレッソを頼みます。気分は「はじめてのおつかい」のよう。

「ぇ、エスプレッソをお願いします」

「ソロとドピオ、どちらにされますか?」

「ん?⋯ソロ?⋯ドピオ?」

聞いたことない単位。何それ。よくわからん。「高い方⋯ドピオで。」

少し待ち、ようやくでてきました。到着。

ちっっっっっさっ。

カップが、想像の何分の一かのサイズでした。カタカタ言わせながら階段を登り二階の席へ。そして一口。

……あれ。飲める。

おいしい、と言ったら嘘。でも、全然飲める。濃いのに、飲める。ただ、小さい。

コーヒー人生の始まり

翌朝、早朝シフト2日目。またテイスティングの時間がやってきます。

差し出されたのは、まろやかな香りのブレンドコーヒー。

寝起きの体に、それがゆっくり染み渡っていきました。昨日まであんなに苦手だった大人の飲み物が、その朝はなぜか、心地よかった。

これが、ぼくのコーヒー人生の始まりです。

飲めなかった人間が、飲めるようになる。それだけの話なんですが、ここからぼくは、コーヒーとずいぶん長い付き合いをしていくことになります。手で豆を挽いて、サイフォンで淹れる、今の毎朝につながっていく。

その話は、また別のところで。

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この記事を書いた人

地方で2児を育てるシングルファザー。
人と違う人生が嫌で、みんなと同じ場所を目指してきました。でもある時それが吹っ切れて、今は人と違う道に誇りを持っています。
ここでは、立ち止まる楽しさとその方法を、実体験ベースでお伝えします。

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